愛犬と一緒に避難できる？ペット防災の準備＆心構え｜いつものおでかけで楽しく予行練習！

こんにちは！ おでかけわんこ部のむっちーです（ペット災害危機管理士）。

大切な家族の一員であるわんこ。
だからこそ、もしものときに「この子をちゃんと守れるだろうか？」と不安に思うこと、ありますよね。

「避難所に一緒に行けるの？」
「何を準備しておけば、この子が困らない？」
「普段の生活の中でできることって？」

私自身も、そんな悩みを抱えたひとりでした。 だからこそ、ペット災害危機管理士の資格を取り、 “いざ” というときに、愛犬を守れるように、そして愛犬を守れる飼い主さんが増えるようにと願いながら学んできました。

防災は、特別なことではなく “日常の延長” にあるもの。 日々のおでかけやしつけ、社会化の積み重ねが、いざというときの安心につながります。

この記事を通して、みなさんが愛犬と一緒に「大丈夫」と思える準備を整え、これからも安心して楽しい時間を過ごせるきっかけになれば嬉しいです。

わんこと一緒に避難できる？

過去の震災では、避難所に入れなかったペットのために飼い主さんが自宅に戻り災害に巻き込まれたり、はぐれたペットが放浪し繁殖・増加するといった問題が生じました。

そのため、環境省ではペットと一緒に避難する「同行避難」を推奨しています。ここで気をつけてほしいのが、同行避難＝飼い主とペットが同じ避難所で過ごせるわけではないということです。

同行避難と同伴避難の違い

「同行避難」と「同伴避難」はどこが違うのでしょう？それぞれ説明しましょう。

同行避難とは

「同行避難」とは「ペットを連れて避難する」という意味、つまり避難行動のことです。ペットの受け入れに関しては、各地域の防災拠点の取り決めにより異なるため、避難所で必ずペットを受け入れてくれるわけではありません。

同伴避難とは

同じ避難所でペットと過ごせることを、一般的に「同伴避難」と呼びます。ただし「同伴避難」ができる多くの避難所では、原則としてペットと人（飼い主）の居住エリアは別の場所です。

つまり、ペットの受け入れをしている避難所だとしても、わんこは飼い主さんと離れて、敷地内の別のエリア（ペット専用の部屋や屋外でのクレート待機・係留など）で過ごすことになります。

現在、「同伴避難」できる避難所のほとんどが、この同行避難別居生活です。

そして、まだ数は少ないですが、ペット連れ専用の部屋や他の避難者と同じスペースで、飼い主と一緒に「同室避難」できる避難所もあります。リードをつければOKというケースもありますが、多くの場合は常にケージに入れておくことが義務付けられています。

住んでいる自治体の対策を確認しよう

災害時の避難所では、毎回、「ペットと一緒に避難生活ができる」と思っていた飼い主さんとのトラブルが少なくありません。

ペットの受け入れをしている避難所はどこなのか、受け入れている避難所では同じ居住エリアで生活できるのかなど、自分の住んでいる自治体の対策を事前にチェックしておきましょう。

災害時のペット対策については、自治体のHPで確認できます。「住んでいる地域＋ペット防災」や「住んでいる地域＋ペット避難」で検索すると便利です！

大切なのは複数の避難先確保

環境省は、「避難所以外の避難先」を確保する分散避難を推奨しています。自宅での在宅避難や、親戚・友人宅、車中泊など、ペットと一緒に避難できる場所を複数確保しておきましょう。

また、想定している避難先が必ずしも利用できるとは限りません。自宅が被災して在宅避難が難しくなったり、道路の陥没や水害、緊急車両優先で車が通行できず、車中泊ができない場合もあります。いざという時に慌てないよう、避難先ごとのシミュレーションを事前に行いましょう。

万が一の時にどんなものを準備する？

愛犬のための防災グッズ

• フード・水・おやつ（7日分以上）
• フードボウル
• 常備薬
• 予備の首輪・リード
• クレート
• 排泄物処理袋・ペットシーツ
• バスタオル
• 愛犬の写真・ペット情報を書いた紙

フード・水・おやつ（7日分以上）

環境省では、5〜7日分の備蓄を推奨しています。災害時は人間用の救援物資の輸送が優先されるため、ペットの救援物資が届くまでには、さらに時間がかかる可能性もあるでしょう。療養食やアレルギー対応食は、災害時には手に入りにくくなるため、多めに準備しておくことが重要です。

フードボウル

折りたたみタイプのフードボウルが便利です。食事用と水用、2つ準備しましょう。

常備薬

常備薬があるわんこは、獣医師さんに保管日数や保管方法などを相談して、多めに備蓄しておきましょう。

予備の首輪・リード

災害時には、首輪やリードが雨や泥で汚れたり、破損したりする可能性があります。予備の首輪やハーネス、リードを用意しておきましょう。停電になって暗い場所での移動や散歩をする可能性があるため、反射板がついたタイプや光るタイプのものがおすすめです。

クレート

避難所では、クレート内で過ごすことが多くなります。動物が苦手な人への配慮やわんこの安全確保のためにも、使い慣れたクレートで安心して過ごせるようにクレートトレーニングをしておきましょう。

バスタオル

クレートに敷いたり、目隠しとして被せたりできます。

排泄物処理袋・ペットシーツ

日常で使っているものを、防災袋にも用意しておきましょう。

愛犬の写真・ペット情報を書いた紙

万が一、わんことはぐれた場合に備えて、紙焼きしたわんこの写真を用意しておきましょう。被毛の色や長さがわかるように全身が写ったものがおすすめです。写真の裏面には、わんこの名前・犬種・特徴などを書いておきます。

また、避難生活では一時的にわんこと離れて過ごさなくてはならない可能性があります。飼い主さんの連絡先を書いたメモに、ワクチンなどの摂取状況やアレルギーの有無、常備薬など注意事項をまとめたものを用意しておきましょう。

防災袋を準備する

徒歩での避難に備えて、フードや薬など命に関わるものを最優先に防災袋に入れましょう。両手が使えるリックタイプがおすすめです。人間用とわんこ用は、ひとつの防災袋にまとめて入れてください。

実際に運べる重さを想定して準備するのが大切なポイントです。男性で10〜15kg、女性で5〜8kg、小学生以下は最大で5kg程度が目安です。

ただし、避難時はわんこを入れたキャリーバッグやリードを持つことを考慮する必要があります。足場が悪く危険な場所を歩いて避難する可能性もあるため、くれぐれも無理はしないように！

ローリングストックのすすめ

いつも食べているフードやおやつ、ペットシーツなどの消耗品を少し多めに買い、使った分だけ買い足すローリングストックがおすすめです。この方法なら、フードやおやつを常に新鮮な状態で備蓄できます。1ヶ月分ぐらいの備えがあるとよいでしょう。

ウェットフードやゼリー状のおやつがあれば、水が不足した時でも水分補給も兼ねられます。また、ストレスで食欲がなくなったわんこも、匂いが強く食欲をそそられるウェットフードなら食べてくれることもあるので準備しておきましょう。

迷子札・マイクロチップの装着

万が一、わんこが迷子になった場合に備えて、迷子札を装着し、マイクロチップを挿入しておきましょう。引越しなどでマイクロチップの登録情報が変わった際は、情報の更新を忘れずに！

愛犬を守る日頃の心構え

平常時とは異なる避難生活は、わんこにとって大きなストレスになる可能性があります。負担を減らせるように、日頃から健康管理としつけを心がけましょう。

愛犬の安全を守るしつけ

わんことの避難生活では、共同生活のルールとマナーが欠かせません。災害時は、わんこも混乱や不安で普段とは違う行動をとることがあります。スムーズに対応できるよう、普段の生活で練習しておきましょう。

◾️クレートトレーニング

避難所では、クレートで過ごす時間が長くなることが予想されます。けれども、わんこがクレートに慣れていないと、不安やストレスで体調を崩してしまうことも。

いざという時に備えて、リラックスできる場所になるように事前にクレートトレーニングをしておくことが大切です。

クレートは、わんこにとって安心できる「自分だけのお部屋」。普段から寝床として使ったり、お出かけ時に使用して楽しい思い出と結びつけておくと、避難生活での負担を軽減できます。

◾️「オイデ」

災害発生時にわんこが離れた場所にいたり、驚いて逃げてしまうことが考えられます。そんな時、「オイデ」で呼び戻しができれば、安全に避難できる可能性が高まります。

また、リードが離れた時にも、「オイデ」ができれば迷子を防げます。普段から練習し、どんな状況でも反応できるようにしておきましょう。

◾️「マテ」

よくある失敗は、一瞬だけ待ってすぐに動いてしまうこと。「マテ」は解除のコマンドとセットで教え、わんこが勝手に動かないよう日頃から練習しておきましょう。

◾️「オスワリ」「フセ」

犬が苦手な方にとっては、リードにつながれていても、近くにいるだけで不安を感じることもあります。「オスワリ」や「フセ」で静かに待てると、「この子は落ち着いていて安心ですよ」と伝えられます。

社会化は災害時のストレス軽減にも

災害時の取り組みには、政府や自治体、公共機関による支援である「公助」の他、自分自身で身を守る「自助」、そして身近な人々と協力して助け合う「共助」があります。ペットに関することは、「自助」が基本です。

また、わんこの飼い主さん同士の「共助」も重要です。

日常的にコミュニケーションを取っておくと、災害時にスムーズに協力し合えます。地域の飼い主さんとつながりを持っておきましょう。

避難所では、飼い主さんとわんこが別々のエリアで過ごさなければならないことがあります。さらに、飼い主さん以外の人にお世話を頼まなければならない場合もあるでしょう。普段からさまざまな人に触れる機会をつくり、いざという時にわんこがストレスなく、スムーズに対応できるようにしておきましょう。

わんこを守る健康管理

混合ワクチンの接種や、犬フィラリア症、ノミ・マダニの予防をしておくことで、わんこの健康を守り、命を守ることができます。ワクチン証明などの書類は、コピーして防災袋に入れておきましょう。

避難経路をお散歩コースしてみよう

歩き慣れた道を避難経路として組み込むことで、飼い主さんもわんこも安心して避難できます。毎日のお散歩に避難経路を取り入れて、実際に歩いてみましょう。避難経路をお散歩する時には、以下のポイントをチェックしてください。

• 落下の危険：看板や割れた窓ガラスなど、落ちてくる可能性のあるもの
• 転倒の危険：ブロック塀や自動販売機など、倒れる可能性のあるもの
• 通行止めの可能性：瓦礫で埋もれそうな細い道など
• 氾濫や津波の恐れ：川や海沿いの道
• 落石や崖くずれの恐れ：山や崖近くの道
• 浸水時の危険：マンホールや側溝の位置

避難経路としてイメージしながら歩くと、いつものお散歩道も違って見えてきます。想定していた避難経路が通行止めになる可能性も考え、複数の経路を確認しておきましょう。事前にハザードマップを確認し、安全な避難経路を複数シミュレーションしておくと安心です。

自宅にハザードマップがない場合や、外出先で被災したときは、「ハザードマップポータルサイト」が便利です。スマホなどにブックマークしておきましょう！

国土交通省「ハザードマップポータルサイト」

災害発生時の注意事項

どんなに準備をしていても、災害時には想定外のことが起こりがちです。避難時に役立つ具体的な行動のロードマップを紹介します。

災害発生直後

飼い主さんの身の安全が最優先

災害発生時は、まず自分の身の安全を確保してください。わんこは飼い主さんの様子に敏感に反応します。パニックになると、その不安が伝わり、わんこが予想外の行動をすることもあります。深呼吸をして冷静に行動しましょう。

わんこと一緒の避難のポイント

わんこと一緒に避難する際は、思わぬトラブルや移動に時間がかかることがあります。そのため、警戒レベル3「避難に時間を要する人は避難」の段階までに、早めに避難をはじめましょう。

また、ペットと一緒に参加できる避難訓練を実施している自治体もあります。実際に避難用品を持って移動し、避難所での行動を体験することで、新たな課題に気づくことができます。機会があれば、ぜひ参加してみましょう。

避難時に必要な周囲への配慮とは？

避難所では、動物が苦手な人やアレルギーを持っている人もいます。鳴き声やニオイ、排泄物の処理が原因でトラブルになることも考えられます。そのため、周囲に迷惑をかけないよう十分な配慮が必要です。

決められたスペース以外に連れ込まない、排泄はルールを守って決められた場所でする、共有スペースでのブラッシングは避けるなど、周囲への配慮を忘れず、マナーを守って過ごしましょう。

楽しくおでかけして防災意識を高めよう

わんこOKのスポットには、動物が大好きな人もいれば、苦手な人もいます。

だからこそ、私たち飼い主がしつけやマナーを大切にすることが、お互いに気持ちよく過ごすための思いやりになります。 この「周りへの配慮」は、実は避難所での生活でもとても大切なこと。

つまり、わんことのおでかけは、一緒に楽しみながら、いざというときに必要なマナーを自然と身につける“予行練習”にもなるのです。

そして、わんこにとっても、おでかけは特別な時間。

新しい場所や人との出会いを経験することで、環境の変化に慣れる練習にもなります。 さらに、もしもの避難生活で、普段からおでかけに使っていたクレートやカフェマットがそばにあれば、それは“安心できる居場所”になります。

大切なわんことの時間を、ただの楽しい思い出だけで終わらせるのではなく、防災につながる経験に変えていく。そう考えると、おでかけの時間がもっと愛おしく、大切なものに思えてきませんか？

愛犬と一緒にたくさんの思い出をつくりながら、もしものときに備える。 そんな素敵な防災のカタチを、一緒に広めていきましょう◎

参考
環境省　「災害におけるペットのガイドライン」　
環境省「備えよう！いつも一緒にいたいから」
気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」